IT人材不足が日本企業のDXを遅らせている
先日、令和4年5月29日付の日本経済新聞電子版に、「IT人材難、低賃金が拍車、求人倍率10倍」という記事が掲載されました。
企業のDXが加速している中、21年10月時点のIT技術職の毎月の新規求人倍率が過去最高の10倍になっているそうです。
なお、他の職種は3〜5倍なので、IT技術職は他の職種の2〜3倍の募集があることになります。
記事のタイトルを読めば、ITエンジニアにとっては転職のチャンスが増えているということになりますが、記事によると、実際は、日本企業が抱えている古い制度や価値観が障害になり、なかなかITエンジニアを求める企業への転職は進んでいないようです。
その理由として、日本の多くの企業で職種ごとに賃金体系が異なる「ジョブ型雇用」が浸透しておらず、ITエンジニアに十分な年収を提示できていないことが挙げられています。
ITエンジニアの年収が、全職種の中央値よりも低く、ITエンジニアが不足していると感じている割に、ITスキルに対して十分な評価をしていると言えず、人材が流動しにくい(転職が活発でない)ようです。
総務省によれば、DXを進める際の課題として日本企業の53%が「人材不足」を挙げているようですが、現時点ではITエンジニアの「人材不足」がそのまま賃金などの待遇につながっているとはいえないようです。
当社では、人材紹介に限らず、多くの企業に対して課題を解決するサービスを提供しております。
その中で私たちがお聞きする限り、ほぼすべての企業がIT領域の課題を抱えています。
そういった課題を解決するためにも、ITエンジニアの採用をしたいというご相談はたくさんいただきます。私たちから見てもいい会社だなと思える会社もたくさんあるのですが、どうしても膨大な求人情報に埋もれてしまい、「いい会社」とITエンジニアの転職のご縁がつながることが少ない状況にあります。
さらに、IT業界では「2025年の崖」と呼ばれる問題もよく話題となります。
「2025年の崖」とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存し続けた場合に想定される、企業の競争力低下による経済停滞などを予測する言葉です。
2025年までに、IT人材の不足により既存のレガシーシステムのサポート不足が生じ、多くの企業にとってIT領域のリスクが高まることが予想されています。
経産省レポート
レガシーシステムがブラックボックス化してしまう要因は大きく分けて2つあります。
・第一に、日本ではユーザー企業ではなく、SIerにITエンジニアが多く所属しているため、ユーザー企業は、SIerに開発を依頼していることがあります。その結果、システム開発はSIerに大きく依存するため、ユーザー企業側にITシステムに関するノウハウが蓄積されません。
第二に、「大規模なシステム開発を担ってきた人材が定年退職の時期を迎えたり、属人化していたノウハウが失われたりして、システムのブラックボックス化が起きています。
レガシーシステムは、今の技術で構築されたシステムよりも維持管理コストが大きく、そのレガシーシステムがブラックボックス化した状態のまま維持を続けていれば、今後維持管理することができなくなる可能性もありますし、。当然、システムトラブルやセキュリティの穴も多くなってしまいます。
こうしたリスクを避けるためにも今のうちに老朽化したレガシーシステムを新しくすることが重要となります。多くの企業で、2025年の崖を回避するために、レガシーシステムの刷新やDX推進を続けています。現在、転職をお考えのITエンジニアの皆さんもこうした潮流を理解しておくことで、転職時、または転職後の業務のお役に立てていただければと思います。
ここでは、そこで触れられているDXのポイントのみ挙げさせていただきます。(エンジニアの採用を検討している企業の人事の方も、このくらいのことを理解しているとお考え下さい。)
■ITシステムの見える化
具体的に既存のシステムに関して評価・分析を行って、どうすれば効率化が行えるのかを考えていく。
■DXで目指すものの共有
DXは経営者だけが取り組む課題ではなく、企業全体で取り組む課題である。
■既存システムの機能圧縮または廃棄
社内に利用されていなかったりする既存システムがあれば、そこにコストをかけ続けるのではなく、利用されていないシステムを廃棄することが重要である。
■部署単位でDXの成功事例を作る
経営陣の腰が重い場合や、現場の反発が見込まれる場合には、部署単位から成功事例を作り、全体へ展開していくと良い。